【現役薬剤師が解説】疑義照会(問い合わせ)の電話・FAXでの方法【医師へのマナー】
この記事を書いた人
薬剤師歴26年、疑義照会のプロ
疑義照会ってどういうふうに聞いたらいいんだろう?なにか暗黙のルール見たいのがあるのかな。医師に「こんなことで疑義照会してくるな!」とか怒られたらどうしよう。とにかく不安だらけだわ。
記事の内容
- 疑義照会しなければいけないとき
- 疑義照会の方法
- 疑義照会をスムーズに行うための準備
疑義照会しなければいけないとき
処方せんに不備があったとき
- 「以下余白」と書いてないとき
- 手書きの処方せんに押印してないとき
- 保険番号・名前・生年月日などの間違い
「以下余白」と書いてないとき
意外と見落としがちなのですが、処方箋の最後に「以下余白」と書いていない場合は2枚目の処方せんがあることになっています。
ですから「以下余白」が処方せんに記載されていなければ疑義照会をして2枚目の内容を確認しましょう。
手書きの処方せんに押印してないとき
処方せんに手書きでなにか書いてあった場合、必ず押印することになっています。
2重線で消して書き直してあるときも疑問を持ちましょう。
患者さんが勝手に処方日数を書きかえたり、薬を追加してしまう場合もありますので疑義照会しましょう。
特に手書きの処方せんでは注意です!
保険番号・名前・生年月日などの間違い
患者さんの情報に間違いがあったときは、疑義照会しましょう。
こちらは医院の事務さんでも答えられますので、時間がかからず疑義照会できます。
処方内容に疑問がある場合
- 薬の用量・用法に疑問があるとき
- 日数に疑問があるとき
- 薬剤が間違いではないのか?と疑問を持ったとき
薬の用量・用法に疑問があるとき
あなたが保険薬剤師である以上ルールに従わなければいけません。
ルールとは添付文書です。
添付文書に「1日1回朝食後」と書いてあるが、処方せんに「1日1回夕食後」と書いてあった場合は疑義照会の対象です。
添付文書に書かれていること以外の用量・用法で処方せんに書かれていたら義義照会をしましょう。
日数に疑問がある時
例えば定時の処方せんで他は28日分なのに1つの薬だけ30日分だった場合です。
ますは患者さんに日数が1つだけ30日分で良いのか確認して、理由を聞いてみましょう。
「その薬だけ、ちょっと足りなくて2日分多めに出してもらったんだよ」
などと理由がわかれば疑義照会の必要はないです。
「なんでそうなったかわからないな〜」
ということであれば疑義照会をしましょう。
薬剤が間違いではないのか?と疑問を持ったとき
間違いやすい薬があるのを知っていますか。
有名なのは「ノルバスク」と「ノルバデックス」です。
あなたも知っている通り、カルテに薬を入力する際に頭文字3文字で薬を検索します。
ノルバスクを処方しようとして「ノルバ」と検索して、間違えてノルバデクッスを選んでしまうために起こる間違いです。
あなたがレセコンの入力方法が全くわからないのであれば、最低限の知識は身につけておきましょう。
特に注意するときは
- 薬が変更になったとき
- 新しい薬が処方されたとき
- 初来局の患者さんの処方せんを受けるとき
など初めての時に注意が必要です。
疑問に思ったときは患者さんにヒアリングしてから疑義照会をするようにしましょう。
添付文書に書いていない用法・用量の処方
適応外処方せんという処方せんがあるのを知っていますか
適応外処方とは
- 海外で使用されているが、国内では使用されていない薬を使うこと
- 国内で使用されている薬を承認されていない薬効・用法・用量で使うこと
海外で使用されているが、国内では使用されていない薬を使うこと
こちらは自費診療になりますので、お薬代も自費になります。
初めて処方せんを受けたときは必ず疑義照会しましょう
自費診療の処方せんを受けたときは、初めてであれば疑義照会です。
あなたが処方せんの薬の使われ方が適応外で使われていることを知っていても疑義照会した方が良いでしょう。
添付文書に載っていない薬の使われ方は全て疑義照会というルールを思い出してください。
あとあと問題になることがあるかもしれませんので、
初来局の適応外処方は必ず疑義照会する
を肝に命じておきましょう!
国内で使用されている薬を承認されていない薬効・用法・用量で使うこと
例えばアレロック錠の用法・用量をみてみましょう
通常、成人には1回オロパタジン塩酸塩として5mgを朝及び就寝前の1日2回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
と書いてあります。
処方せんに「1日2回 朝夕食後に服用」と書いてあったら適応外処方です。
まれに返戻の対象になります。
現実ではほとんどの薬剤師は暗黙の了解で、上記は疑義照会しません。
門前のクリニックから「返戻あったんだけどなんでかわかる?」など聞かれることもあります。
覚えておいてください。
疑義照会の方法
- 電話での疑義照会の流れ
- FAXでの疑義照会の流れ
処方せんに疑義照会する場合の方法が書いてあることがあります。
大学病院などの大きな病院はFAXで問い合わせをしてください、と書いてあることが多いです。
電話での疑義照会の流れ
薬剤師「〇〇薬局の荒川と申します、本日の処方箋で問い合わせをお願いしたくお電話致しました」
医院の受付「IDと患者さんのIDとお名前、生年月日を教えてください」
薬剤師「ID 100 の〇〇 〇〇さんで昭和55年5月5日になります」
医院の受付「どんな内容ですか」
薬剤師「アムロジピンの日数だけ14日分になっていて、他の薬は28日分で出ています。患者さんに確認しましたが、特に先生から聞いてないし薬があまっているわけでもないのでアムロジピンも28日分欲しいとのことでしたのでご確認おねがいします」
医院の受付「確認しますので少々お待ちください」
医院の受付「先生に確認したところアムロジピンも28日分でお願いしますとのことでした」
薬剤師「わかりました、ありがとうございました」
とこんな感じになります。
1つずつ注意点を見ていきましょう。
「〇〇薬局の荒川と申します、本日の処方箋で問い合わせをお願いしたくお電話致しました」
まずは名乗りましょう。
医院によっては「薬剤師のかたですか?」と聞かれることもあるのでいちど聞かれたら次からは最初から「薬剤師の荒川です」と名乗りましょう。
要件を言いましょう
処方せんの問い合わせであることを伝えます。
医院によっては「いつの処方せんですか?」聞かれますので「本日の」とか「〇月〇日」の処方せんと付け加えたほうがよいです。
紙カルテを使っている医院は今日の診察分のカルテはまとめて置いてあることが多く、カルテ棚に戻していないためです。
今日の処方せんの問い合わせならば、カルテは本日分のなかにあり、今日以外であればカルテ棚にカルテがあるとわかるのでカルテを探しやすくなるからです。
ID 100 の〇〇 〇〇さんで昭和55年5月5日になります
IDは処方箋のどこかに書いてあります
処方せんの右上や左上、患者さんの名前のあたりにIDが書いてあることが多いです。
薬局と違い医院では患者さんを名前と生年月日ではなくカルテNo=IDで管理しています。
電子カルテの場合は患者さんをIDで検索するため、IDが必要になります。
疑義照会する前にIDも確認しておきましょう。
わからない場合はすなおに「IDはどこに書いてありますか」と聞きましょう。
探すのは時間の無駄です。
西暦と和暦どちらか確認するとよりGood
これも病院側の電子カルテの設定の関係なのですが、西暦で検索するか和暦で検索するかどちらかがメインになるためです。
基本的には処方せんに書いてある方でよいです。
「和暦でいいですか」と答える前に聞いてしまうのもよいでしょう。
アムロジピンの日数だけ14日分になっていて、他の薬は28日分で出ています。患者さんに確認しましたが、特に先生から聞いてないし薬があまっているわけでもないのでアムロジピンも28日分欲しいとのことでしたのでご確認おねがいします
疑義照会の内容はできるだけ詳しく話そう
この部分だけは時間をかけてOKです。
中途半端に伝えると、また先生から質問がありやりとりの回数が多くなって時間がかかります。
伝言ゲームにならないように、しっかりと内容を伝えましょう。
患者さんに確認してあることを伝えよう
患者さんに確認済であることを必ず伝えましょう。
患者さんが後でとりに来るなどで聞けなかったときは
「患者さんがいま居なくて聞けなかたのですが・・・」
と患者さんに確認できなかったことを伝えましょう。
これを言わないと「患者さんに確認してもらえますか?」と必ず聞かれますので。時間の無駄になります。
「わかりました、ありがとうございました」
終わりにはかならず感謝の言葉を言います。
医院のミスで問い合わせをしたとしても時間と手間をとらせたことには変わりありませんのでお礼を言っておいて損はありません。
医師が直接電話に出た場合
ラッキーと考えます!
最初は医師と話すのは緊張します。
しかし医師と話すのは伝言ゲームがないため直接伝わりますので即答してくれます。
実は医師とやり取りした場合が疑義照会のための時間が一番少なくて済むのです。
FAXでの疑義照会の流れ
FAX送付状を準備しておく
記載項目
- 患者さんの名前・生年月日・ID
- 薬局の名称・住所・電話番号・FAX番号
- 問い合わせの日時・薬剤師名・問い合わせ内容
FAX送付状と処方せんを病院にFAXする
FAX先は処方せんに書いてあります
薬剤部に送るよう指示されている場合が多いです。
病院から結果の連絡があるのを待つ
患者さんには時間がどのくらいかかるか知らせておきましょう
10〜15分位は時間がかかります。患者さんには予め時間がかかることを説明しておきましょう。
「FAXで先生に確認をとりますので、15分位お時間いただきますがよろしいでしょうか?」
15分経っても連絡がない時は、こちらから病院に時間がかかるのか電話で問い合わせてみましょう。
何か理由がある時は、患者さんにもなぜ時間がかかっているのか伝えましょう。
「申し訳ありません、先生と連絡がとれなくて時間がかかっているようです。お時間大丈夫ですか?」
患者さんを気づかう心が大切です。
疑義照会の返事の連絡がきたらまず患者さんに伝えましょう。
「今、返事が来て〜になりましたので、すぐにお薬準備しますね」
患者さんは、もう待たなくて済む、と思いますので少し気が楽になります。
「大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした」
疑義照会は処方せんの不備であり、薬剤師が悪いわけではないのですが謝罪の言葉をひとこと目に述べましょう。
疑義照会をスムーズに行うための準備
義義紹介の前に準備しておくこと
- 代替え案を調べておく
- 医師と良好な関係を築いておく
代替え案を調べておく
ほとんどないのですが医師よっては
「じゃ、何か他に使える薬あるの?」 「体重換算すると何g?」
などと聞かれることがあります。
聞かれてから「ちょっとお待ちください」は絶対ダメです。
スラスラと答えられるように準備しておきましょう。
経験が少ないと調べるのに時間がかかりますが、この時間を惜しんではいけません。
医師と良好な関係を築いておく
薬剤師の1日も時間との戦いですが、医師も同じです。
疑義照会は相手の時間を奪っていると認識しましょう。
そこで生まれたのが「あと問い」です。
他の薬局では別の呼ばれ方をしているかもしれません。
例えば、漢方薬は食前で飲むのに、入力ミスで「食後」で処方せんに書いてあったとき。
本来は疑義照会して「食後」を「食前」に変更してもらわなければいけません。
しかし、事前に医院の医師と話し合いをおこなって「食後」の入力ミスのときは「食前」で調剤していいよ。
と了承を得ておけば、都度問い合わせをしないで、お昼休みにまとめて報告書を持っていく、ということができるようになります。
日頃から医師、看護師、事務とコミュニケーションをとっておくことが重要です。
1ヶ月に5回食後→食前の疑義照会があったとすれば
「先生、食後の入力ミスのときはその場で問い合わせをしないで、後から昼休みと終了後にまとめて報告でもよろしいでしょうか」
と提案することができるようになります。
もちろん医師によっては
「毎回、疑義照会してくれ」
という医師もいますが、提案することは悪くないし自分自身のスキルアップにもつながりますのでどんどん提案していきましょう。